翻訳コーディネーター時代のこと

翻訳ができる人って憧れますよね!
わたしはそんな超優秀な人たちと一緒に仕事をしたことがあります。

これは今からもう10年以上前、
わたしが技術翻訳の会社で翻訳コーディネーターをしてた時の話です。

子育て中は専業主婦だったので、10年ぶりくらいの会社勤めでした。

周りはみんな英語ができる人ばっかり。
という恐ろしい環境で、
おろおろと仕事をしてた頃のことを思い出しながら書いてみます。

地方の小さな翻訳会社で

TOEIC満点保持者がいる職場

もう10年以上前、翻訳会社に務めていました。
翻訳会社ですから、もちろん周りは英語の天才や秀才ばかりでした。

翻訳担当者には、TOEIC990点保持者も!
そのほかの人たちもアメリカ留学はあたりまえ。
卒業後は向こうでそのまま就職して、バリバリ仕事をしていた人たちに囲まれて仕事してました。

社員10人ほどの小さな会社で、全員日本人でしたが、もちろん、社内で一番英語ができないのはわたしです。

その会社では技術翻訳を扱っていました。

特許翻訳という世界

技術翻訳って聞くと何を思い浮かべますか?

コトバの感じからイメージできるのは
機械の取説やマニュアルの翻訳みたいな感じでしょうか?

でもその会社はとっても特殊で、
主に特許の出願書類などの翻訳でした。

特許の出願書類って見たことあります?

特許技術について詳細に書いてあるんですが、使われている文体や用語がとにかく特殊で、日本語でも何書いてあるか理解するの難しいんです。

英文も日常では使わないような特殊な文なので、優秀なキャリアバリバリの皆さんですら、その文体に慣れるまで始めは戸惑うらしいです。

わたしが住んでいた街は世界的なメーカーさんが多く、そこが主要取引先でした。
当然特許もたくさん持ってて、その特許を国際的に認めてもらうために国際特許申請の英語の書類をつくるのです。

※注:特許は国ごとに保護されるので、輸出先でも特許権を主張するためには、相手国にも通じる国際特許が必要です。

海外翻訳者さんとのやりとりのコツ

時差が生む「こびとの靴屋」現象

わたしの仕事は「翻訳コーディネーター」でした。

翻訳の案件が決まると、納期や予算を見て、どの翻訳者さんに振るのかを考えて、手配したり、進行管理をしたりするんです。

翻訳者さんは社内だけじゃなくて、外部にもいたので、メールや電話でやり取りするわけです。

国内だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、中国などいろんな国に翻訳者さんがいるので、時差とか考えつつスケジュールの管理をする感じでした。

イギリスやアメリカが相手だと、日本の方が半日以上時間が早いので、「朝になったら納品されてた!」みたいな感じで、「こびとの靴屋」的な感動があったりします。
(相手はべつに徹夜してるわけじゃないですけど)

海外との仕事上のやり取りの落とし穴は「祝日」

中国人の翻訳者さんはすごく言葉も丁寧で、優秀な方でした。この方は中国語-日本語の翻訳者さんで、メールも日本語で送ってくれました。
お正月には大きくて立派な年賀状が、4人のコーディネーターそれぞれに一枚づつ送られてきました。

お正月といえば、中国は旧正月(春節)として1月下旬がお休みになるので、その間7連休くらいは仕事が動きません。日本でも毎年この時期になると爆買いの中国人旅行客の話題がニュースになりますよね。
それと、国慶節は10月でこちらも8連休くらい。これは建国記念日なので、盛大にお祝いするようです。

あとはイスラム圏のラマダーン明けのお祭りは移動祝祭日なので、毎年注意が必要です。

こういうのをコロッと忘れてスケジュールを組んでしまうと、もう大変です。

日本人みたいに、「休日返上で仕事する」とかいうのはまずないので、メールすら帰ってきません。

社内いち英語出来ないというコンプレックス

自分だけ留学経験がない環境

職場で自分が一番英語ができなかったという話をしましたが、
それもそのはず、わたしだけ留学経験がなかったんです。

翻訳者はもちろんのこと、わたしと同じコーディネーターたちもみんな留学経験者でした。

彼女たちは海外の翻訳者さんとのメールのやり取りも、お互いを愛称で呼び合ったり、ニックネームをつけてもらったりと、もうなんか「欧米か!」って感じで…。

この子たちは20代~30代の女子だったんだけど、わたしは当時40代になっていました。

職場では年齢とか関係なく、みんな仲良かったけど、
もうねー、いろんな意味でギャップがありました。

密かにTOEICにチャレンジ

で、密かに勉強し始めたんです。英語を。

TOEIC受けてみたりもしました。
結果は580点。

これはTOEICの平均点といわれるスコアですが、中級レベルの目安といわれる600点には届きませんでした。

当時は企業が新卒者に求めるレベルが、630点とも言われていました。

分かってはいたものの、こうして現実を突きつけられ、打ちのめされた思いでした。

今はもうブランクがありすぎて、きっと今TOEICを受けても500点も取れないんじゃないかと思います。

最近ではTOEICも、リスニングとリーディングだけでなく、スピーキングとライティングのテストもあるんですよね。

ま、テストは当分受ける予定ありませんが…。

さて会社では、そんなわたしのコンプレックスをさらに刺激するイベントが待っていたのです。

キョーフの社内翻訳勉強会

勉強熱心な社風はいいんだけど

当時社内で月に一回の勉強会がありました。

はじめに説明した通り、技術翻訳の会社なので、技術的なこととか、何をどんなふうに訳すとか、いろいろと社内で勉強しようということで、私が入社する前からずっと行われていたようです。

これは、翻訳者だけではなく、コーディネーターも全員参加だったんです。
で、仕事に慣れてきたころに
「はみんぐさんも参加してね」とか言われて、内容もわからず「はーい」と参加したわけです。

当番が回ってきた!

勉強会では、ある市販の技術翻訳の本をテキストとして、その本を1章ごと勉強していきます。

ファシリテーターは社員が順番で受け持つスタイルでした。

それがね、
さすがにこの担当者は翻訳者さんだけだろうと思っていたら、コーディネーターも全員で順番だというんです。

いやいやいや、ムリだから。

だって出てくる単語の意味もわかんない、
てか、見たことも聞いたこともない単語が並んでいるんです。

それを当番がまず音読して、訳文とか注意点とかの日本語も読み進めていきます。

参加するだけだったらね
居眠りしないようにだけ注意して、おとなしく聞いていればいいと思ったら、大間違いでした。

そして数か月後、
ついに回ってきましたよ、当番が。

もう冷や汗をかきながら、突っかかりつっかかり、ようやっとのことで英文を読み…。
まるで拷問かと思うような、永遠に終わらないんじゃないかと思うように、長~い時間を過ごしました。

当時は今のようにワンタッチで単語の発音を教えてくれるサイトもなくて、とても苦労しました。

でも、みんないい人で、
辛抱してじっとつき合ってくれて…。
それがまたつらいというか…。笑

そして、やってきたリーマンショック

そんなこんなで楽しく(?)過ごした翻訳コーディネーター時代も、ある日突然終わりを告げます。

リーマンショックのあおりを受け、会社の売上が激減したのです。

もともと親会社があって、翻訳部門はその子会社として独立していたんですが、
親会社の業績も振るわず、ついに翻訳部門は規模を縮小することになったのです。

翻訳者、コーディネータともに数を減らすことになったと告げられました。

そう、リストラの対象になったのはわたしです。
そしてベテランの翻訳者さんも。

会社としては、若い人を残すのは当たり前なので、特に恨みはありません。
倒産はしなくてよかったとも思っています。

ただ、あのままあそこで仕事してたら、もっと早く英語ができるようになっていたかなー?
な~んて時々考えたりもします。

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